「花、香る歌」は朝鮮の時代の庶民の歌を歌う初の女性パンソリの話。
この映画、興行的にはあまり良くなかったそうですね・・・
【花、香る歌】は実話だった!
「花、香る歌」は波乱に満ちたチン・チェソンが初の女性パンソリとなるまでを描いていた実話の映画です。
1867年、女性のパンソリが許されなかった時代。
運命に逆らってパンソリの道を突き進んだ朝鮮初の女性歌い手「チン・チェソン」と彼女を育てた師匠「シン・ジェヒョ」の物語。
この「花、香る歌」は興行収入的に低迷気味だったそうですが、だからといって面白くないわけではありません。
師匠への純粋な思慕、一見静かでありながらも自身の人生を花咲かせたいという情熱を抱くチュニャンの少女と大人の女性の間をとても豊かに、上手に描いています。
しかし、時の王様の寵愛を受けるも、その後の消息は不明だそうです。
人知れずなくなったのかと思うと、寂しい気もしますが平民・貧民の歌として成り立ったパンソリそのものとして生きたのかも知れませんね。
そんなこんなで、観るたびに理解が深まって物語の中に溶け込むような感覚になり、パンソリという伝統芸能に興味が湧き、私が二度と観た映画の一つとなりました!
映画見る時の俳優への私の視点は、目と口の演技です。
その他見ている人が、この登場人物はどんな思惑があるか考えさせる表現かどうかを見ます。
師匠役のジェヒョの表情や目の表現がとても奥ゆかしく、西洋人には出せない演技だと感じ、ハリウッド映画などではまず観ないです。
奥ゆかしく、言葉も少ない。なのに語るものがたくさんあり、観る人にも伝わる・・・
奥ゆかしいから、何度見ても良い。
これがおかちゃんは二度見る認定作品の理由です。
【花、香る歌】パンソリって何?
朝鮮時代は女性が低く観られていた時代。
しかし市民平民が楽しむ歌でさえも、男性しか歌うことを許されてはいなかったのです。
腹筋力が女子では足りないといわれていたからです。歌にとって声量はとても大切ですからね。
確かに、男女の力は違います。女の人には無理だという所以の一つなのかもしれません。
日本では、武士として生まれても上士と下士に別れ、それは一生覆されない。
生まれた階層や男か女かで人生の全てが決まる時代がどこの国にもあったんですね。
パンソリは唱い手(ソリクン)と鼓手(コス)の二人だけで綴られる伝統芸能で300年の歴史があります。
楽譜がなく、人の口から口へ歌い継がれてきた、口承文芸のひとつです。
民衆の歓喜や鬱憤、悲哀を反映して発展してきた背景があり、日本でいう浪曲に近いそうです。
パンソリの『パン』とは多くの人々が集まる場所を、『ソリ』は音を意味。
18世紀末に原型できたとされ、祭りや市の日に村の広場で『パンノルム』と呼ばれる大道芸の一つだったそう。
物語を唱で綴り、語り(アニリ)で状況を説明する形で進行。
また、『パルリム』といわれる扇子などを使った簡単な手や足の動き、顔の表情が、物語に臨場感を与えてくれます。
その様子が、顕著にこの「花、香る歌」にも表されているので、とても興味深く観ることができますよ。
プロの唱い手として認められるには、約10年の歳月が必要であるといわれています。
パンソリは、かつては12作品ほどの演目があったとされています。
しかし完全な形で残っているのは「春香歌(チュニャンガ)」、「沈清歌(シムチョンガ)」、「興甫歌(フンボガ)」、「水宮歌(スグンガ)」、「赤壁歌(チョッピョッカ)」の5曲のみだそうです。
「春香歌」や「沈清歌」は映画なの中でも主人公を生涯をあらわす重要なテーマとして出来てきます。
『春香歌(チュニャンガ)』
韓国版の「ロミオとジュリエット」と言われていて、妓生(キーセン)の娘と両班(ヤンバン)の息子の恋物語
『沈清歌(シムチョンガ)』
盲目の父親の治療費を工面するため、船頭に売られるシムチョン(沈清)が航海の安全を祈願するため海に飛び込み、海の神様の生贄になった悲しい親孝行の物語
パンソリの内容は物語なので、最初から最後まで唱うと8時間もかかる作品もあるとか。
8時間…ぶっ通しでやった過去があったのなら知りたいものですね!
舞台では物語の一場面が唱われることが殆どだそうです。
平家物語よりすごいかもしれません!壮絶な歴史があった「パンソリ」ですが、2008年にはユネスコの無形文化遺産となりました。
今では女性の活躍が目立ちます。YouTubeでは沢山の女性パンソリがUPされているのでご興味のある方はどうぞ検索されてみてください。
【花、香る歌】の感想、とにかく美しい!
まず、映像はとても自然で温かみがり、素朴な美しさがあります。
扶安、安東、水原などの絶景です!
撮影はシネマスコープというで映し出されているので
映画館で見ているかのような雰囲気。
(シネマスコープは横長の画面で
普通のテレビの画面比率が16:9に対し2.35:1となります)
全体的にカラフルより抑えられていて、埃っぽい薄い茶色の感じの雰囲気です。
もちろん宴や妓生と呼ばれる日本で言う芸妓さんなども出てくるので
華やかさも一部ありますが目で見る華やかさよりも
歌による華やかさを引き立てる演出です。
映画の中でも、「花を抱くように」という台詞がありますが
まさにその通りの表現を私たちに見せ
私たちの乏しい想像力を豊かにしてくれます。
そして、「パンソリ」の歌い方に鳥肌が立ちました。
歌で物語る世界に惹きつけられるかのような演技(ノルムセ)や動物そのものであるかのような鳴き声
心の奥底を表現する言葉・・・
魂で歌う、庶民の歌。とても美しいです。
それなのに両班など上流階級の人も楽しむという皮肉なものですよね。
そして、女性が歌うこと禁止されていたとは。。。。
私はCDで女性のパンソリを聞いたことがあります。
伴奏は太鼓のみ。
迫力があり聞き入ってしまいました。
それが私が初めて知ったパンソリでしたが、大昔は男性しか歌うことが許されていなかったとは驚きでしたね。
主役の女の子も素朴さが出ていて良い印象です。
見た目を綺麗に描かない描写がこの映画の好印象な一つですね。
秘めたる恋心パンソリになりたいという純粋さ。
しかし、その主役の女性は「国民の恋人」と言われたアイドルではありませんか!
話題沸騰中のmissAスジちゃんに学ぶ!韓国美人を手に入れるダイエット方法とは!?#ソンムル欲しい #manigirl https://t.co/4XmjrYjQTc
— macaron (@MAKARON06454589) May 24, 2018
その名も「スジ」
韓国のアイドルグループ「miss A」のメンバーだそうです。
なかなか演技者ですね!
チニョンは物語の中では男に変装して何度かパンソリを披露しようとするのですが、いつもバレてしまう。
その時の窮地に追い込まれた状況での度胸は潔いです。
人間の本質は窮地に追い込まれてこそわかるものです。
そこ道が二つに分かれるんですね。恐れる者と挑むものと・・・
度胸といえば、大雨の中一人で大声を出す特訓をして倒れた時、
煎じ薬を何も知らず?あどけない顔で飲むシーンは印象に残っていますね笑
それから総勢700人のキャストのが観ている中で、
春香歌を披露するシーンは堂々たるものがありました!
🎞オンライン韓国映画企画上映会~パンソリ特集~🎞
②『花、香る歌』
女人禁制とされたパンソリで女性初の歌い手となった実在の人物チン・チェソンの波乱の人生を描いた時代劇作品◆申込締切:3/27㊐(観覧無料)
◆視聴可能日時:3/31㊍ 18:00~22:00🎬申込はこちら⇒https://t.co/FDorKfYKki pic.twitter.com/PhLvNcNFJO
— 駐日韓国文化院 (@kccjp) March 14, 2022
しかし、すこーしだけ気になるのが、歌が上手くない気がします。
喉が開いていない感じ。ファンの方、ごめんなさい!
韓国でアイドルになろうものなら
とにかく3年間無休でみっちり猛烈にレッスンし
苦しい日々を過ごさねばなりません。
それを越えてきたアイドルなのだからそれは大いに尊敬しています。
見た目、演技、歌の三方よし!にこしたことはありませんが
主役の歌自体は上手ではない印象でした。
しかしそれをカバーできるくらいに演技力、表現力は素晴らしいものがあります。
師匠の目の表現や心情の表し方も味がありました。
淡々とした映画ではありますが、無駄な表現シーンや言葉が殆どなく
さらっとした仕上がり。
叙情的で何度観ても良い映画だと思っています。
おかちゃんは映画を2度観るに登録させていただきました!
勝手にですが笑
【花、香る歌】あらすじと結末は?
あらすじ
幼子のチン・チェソンは早くに父を亡くし、母に連れられツテを頼ってキーセン(芸妓)の宿に預けられます。まもなく母も病気になり天涯孤独となったチェソンは悲しみに暮れていました。
そんな時に深い悲しみから救ってくれたのが、路上で歌っていたパンソリ、シン・ジェヒョ。
朝鮮初のパンソリ学堂を営むパンソリの師匠でした。
泣きたい時は、思う存分泣くが良い
涙の後は笑顔になる
それがパンソリだ
ジェヒョはチニョンにそう声を掛けました。
パンソリを聴き終わる頃には幼きチニョンの涙はすっかり乾き、清々しい顔になり
2人は別れたのでした。
そして母に預けられた妓楼の下働きしながらいつかパンソリになろうとひたむきに頑張るチェソン。
ある日、男に変装して入門試験を受けにきましたが、結局バレてしまいます。
それでも、チェソンは諦めず師匠にしつこく取り繕い、結局折れて入門を許可してしまいます。
何故なら禁忌を犯してまでも、この少女の声には唯一無二の輝きを見出していたからです。
チェソンの才能を開花させてあげたい。
その一心で、残った門下生と山奥で修行を始めるのでした。
ある時、宴の催し物としてパンソリの選抜を受けに都へと訪れます。
しかし年頃であるチェソンは見破られ、禁忌を犯した罪で師匠は罰を受けることに。
体罰を受けている門の前で待っていると、昔お世話になったキーセンたちに出会います。
どうやら選抜に参加したその宴に出演する為の練習で来ていたのでした。
宴の当日、チェソンはキーセンに扮して歌を大院君の前で披露します。
ところが、パンソリに造詣の深い大院君はキーセンの歌い方と違うことに気づいたのです。
チェソンは観念して真意を語ります。
師匠を助けてください。
腹の据わった堂々ぶりに、大院君は条件付きで赦します。
#ナムギル が出てる映画 #花香る歌 アジドラ6/2土 22:30から日本初放送! #キム・ナムギル は友情出演した「花、香る歌」で、出番が少ないにも関わらず、当代最高の権力者である興宣大院君役を通して強烈な存在感を示し、ストーリーに緊張感を吹き込む。https://t.co/0AAyYpjNnv pic.twitter.com/jNb7E7IR8r
— chirin(ちーりん)🌷 (@chirin_lsj) May 24, 2018
その条件とは
落成宴で優勝すれば立身出世もできるが
失敗すればこの厚意を無碍にした罪で命はないとのことでした。
実は大院君は麟坪大君(インピョンテグン)で旅をする両班だった昔、パンソリの師匠ジェヒョと飲み交わしたことがあったのです。
王座を狙うも寝首を掻かれるかもしれない不安、
パンソリで貧民を慰めたい大義、
お互いの悩みはノルムセ(演技)で耐え抜くしかない。良き時代が来きたらお互いまた再会しようと約束した中でした。
1864年に大院君の幼い息子が王位に就きます。
すると父である大院君の悪政が蔓延り、今に至っていたのでした。
パンソリに造詣が深いはずなのに、
女性のパンソリなど認めることはなかったのでした。
ついに、落成宴でのパンソリ競技。
大院君や幼き王様、多くの民衆の前で「春香歌」を披露し、見事優勝を果たします。
皆大喜びでご褒美まで用意されご満悦。
しかしそれだけではありませんでした…
【花、香る歌】結末は?
大院君はチェソンを側に置くと決め、師匠と離れ離れに。
舟艇での暮らしは不自由ないものでしたが、心は囚われの身でした。
師匠を思い続けたチェソンは春香歌の主人公チュニャンそのもののように生き、
師匠はチェソンを待ち続けたのです。
1873年、大院君が失脚
チェソンを引き留めておく力もなく大院君から解放され、雪の中師匠の元へ・・・
師匠の居る桐里精舎(トンニチョンサ)の縁側に座るチェソン。
師匠と再会できたかは、描かれずに幕を閉じます。
実はその後のチェソンは不明なので、描かれていないのだと思います。
映画なので、想像のシーンを作っても良いと思いますが
おそらく忠実にチェソンを春香歌と重ね合わせた物語として
作りたかったのではないでしょうか。
師匠と弟子の美しい愛、静かに燃える心を見事に描いた映画です。
女性パンソリを披露する落成宴でのシーンは見ものです。
池は百済時代の王室の池だった扶余という池だそうで、映し出された慶福宮の桜は最も困難だったと言われています。
この映画は女性初のパンソリ「チン・チェソン」を歌の中の主人公、シムチョン(沈清歌)やチュニャン(春香歌)の人生そのもを体現しているかのように描かれています。
師匠のチェソンに対する秘めた愛を隠すぶっきらぼう表情と、チェソンの師匠に対する恋慕を豊かに表現する姿が最後まで対照的に描かれていてとても奥ゆかしい物語です。
ご興味のある方はぜひ、ご覧になってくださいね♪
《作品案内》
大家シン・ジェヒョ(リュ・スンリョン)
製作年:2015年
上映時間:109分
ジャンル:ヒューマンドラマ、音楽
監督:イ・ジョンピル
<キャスト>
ペ・スジ=チン・チェソン
リュ・スンリョン=シン・ジェヒョ
ソン・セビョク=大院君
キム・ナムギル etc
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